思考のまんなか

知らない人に話しかけられる。

おじいちゃんの知り合いの人だ。

彼らは僕のことを「理系の孫」「今どきの若者」などと呼ぶが僕はおじいちゃんの孫以外の何者でもない。括られるのは苦手だ。

 

〇人が集まる会館の中、既に僕は品定めを行っていた。人間として尊敬できる人とそうでない人。これは特技でもなんでもないのだが、顔を見れば性格は大体分かるし、話し方を見ればないし聞けばさらに細かいことが分かってくる。どういう人間か、という定め方は可能ではあるがそれは憶測にすぎない。ので結局、好きか嫌いかで分ける。

〇靴箱の近くで話しかけてくれたおじいさん(A)お父さんのお姉さんの旦那さんだ。この人は尊敬している。身体が無意識に喜ぶ。声が高くなる。部活の大好きな先輩と話す時の声になっていることに気付いた。身長は低いが背筋がぴしっとしてる。消防隊員みたい。いざとなったら頼りになりそうな人だ。かっこいい。

〇お婆ちゃんと、おじいちゃんのお姉さんBは仲が悪いようだ。お母さん曰く「バチバチ」らしい。齢80すぎて過ぎてそういう、バチバチ、があるというのはまあまあ面白い。未だに何かを強く抱いているのだろうか。お婆ちゃんとしては、姑のように口うるさいそのBが苦手らしい。

〇どうしてこう、お婆ちゃん方は喋るのが好きなんだろう。喋るのが好きなのは僕も同じだが、目の前の人間にとにかく喋り散らかす彼女らは苦手だ。散らかしてるんだもの。別に嫌いじゃない。が、いかんせん疲れる。山小屋エチュードでもやらせたらとにかく喋ってそうだ。いや、逆に「どうしましょうねえ~~」って小首を傾げながら苦笑いを浮かべてそうだな。というか浮かべろ。

 

いや、こんなこと書きたかったんじゃねえ。

 

  〇

 

人は案外、雑だ。「全身の毛穴からオーラを出すように」AKB48のアイドル達は心構えとしてそう教わるらしい。僕らは死後のおじいちゃんを現世から操作する。それはきっと厳密なはすだ。

 

収骨の折、僕らは骨を箸でつまみ、ちりとりのような銀色のケースに入れる。大きく、思ったよりも重い骨に苦戦して落としてしまうこともあれば(別に高いところから落とした訳では無いので物音はほとんどたっていない)どこまで回収すればいいのか分からないねえと呟くおばさんもいた。ご焼香のやり方も人それぞれだ。いわゆる「おしいただく」というのをおでこの前まで持ってくる人もいればなんとなく指を上に向けて済ませる人もいる。回数も3回の人や1回の人がいる。

野球部の頃、リュックやバッグは丁寧に一列に並べろと教わった。そういうのに慣れていた、というか細かい規律に従うことを嫌がらなかった僕の性格からだろうか、こういった所作の数々に対し酷く雑だなと思う。ご焼香くらい直前でもいいから調べればいいものを。

まあ、僕もそこまで頑張ったわけではない。雑だと思うだけでそれが悪いとは思わなかった。……いや少し思ったけど。

でも、こういった煩雑な感じがちょっと好きだ。微妙に足りてない感じ。ああ人間だなあって感じる。